2021/04/14
主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(29)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
TBCSグループの食品関連向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。
当社は、JFS規格の監査会社もしています。
今回からは「8.5.2 ハザード分析」に入ります。
本日はその中の「8.5.2.1 一般」と「8.5.2.2 ハザードの特定及び許容水準の決定」について解説します。
この要求事項は、HACCP7原則の1原則目に該当し、食品安全上、大変重要な要素であり、ここが十分に実施されていないとこの後の仕組みが、あまり意味を持たなくなります。
自社のハザード分析結果を、是非見直す機会として下さい。
要求事項は以下の通りです。
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8.5.2 ハザード分析
8.5.2.1 一般
食品安全チームは、管理が必要なハザードを決定するため、
事前情報に基づいてハザード分析をしなければならない。
管理の程度は、食品安全を保証するものでなければならない。
必要に応じて、管理手段を組み合わせたものを使用しなければならない。
8.5.2.2 ハザードの特定及び許容水準の決定
8.5.2.2.1 組織は、製品の種類、工程及び工程の環境の種類に関連して、発生することが合理的に予測される全ての食品安全ハザードを特定し、かつ、文書化しなければならない。
特定は、次の事項に基づかなければならない:
a) 8.5.1に従って収集した事前情報及びデータ;
b) 経験;
c) 可能な範囲で、疫学的、科学的及びその他の過去のデータを含む内部及び外部情報;
d) 最終製品、中間製品及び消費時の食品の安全に関連する食品安全ハザードに関するフードチェーンからの情報;
e) 法令、規制及び顧客要求事項。
注記1
経験は、他の施設における製品及び/又は工程に詳しいスタッフ及び外部専門家からの情報を含めることができる。
注記2
法令・規制要求事項は食品安全目標(FSOs)を含むことができる。
コーデックス食品規格委員会はFSOsを“消費時の食品中にあるハザードの最大頻度及び/又は濃度で、適正な保護水準(ALOP)を提供又はこれに寄与する” と定義している。
ハザード評価及び適切な管理手段の選択を可能にするために、ハザードを十分、詳細に考慮することが望ましい。
8.5.2.2.2 組織は、各食品安全ハザードが存在し、混入され、増加又は存続する可能性のある段階(例えば、原料の受け入れ、加工、流通及び配送)を特定しなければならない。
ハザードを特定する場合、組織は次の事項を考慮しなければならない:
a) フードチェーンにおいて先行及び後続する段階;
b) フローダイアグラム中の全ての段階;
c) 工程に使用する装置、ユーティリティ/サービス、工程の環境及び要員。
8.5.2.2.3 組織は、特定された食品安全ハザードのそれぞれについて、最終製品における食品安全ハザードの許容水準を、可能なときは
いつでも決定しなければならない。
許容水準を決定する場合、組織は次の事項を行わなければならない:
a) 適用される法令、規制及び顧客要求事項が特定されることを確実にしなければならない;
b) 最終製品の意図した用途を考慮する;
c) その他の関連情報を考慮する。
組織は、許容水準の決定及び許容水準を正当化する根拠に関して文書化した情報を維持しなければならない。
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まず、ハザード分析の実施者は、食品安全チームです。
コンサルタントや誰かに任せるのではなく、チームで取り組むことが重要です。
食品安全チームは、事前に集めた原料規格書や安全証明、製品の特性を理解し、フローダイアグラムの現場確認等から、ハザード分析を開始します。
「一般」では、食品安全を保証するレベルで分析して下さいと求めています。
具体的には次からです。
8.5.2.2の「ハザードの特定及び許容水準の決定」では、「発生することが合理的に予測される全ての食品安全ハザード」を各工程ごとに特定し、それらの許容水準の決定を求めています。
特定されたハザードや許容水準は、文書化が必要です。
何をもって合理的と言えるかが問題ですが、これは、食品安全チームの力量に委ねられています。十分な力量が無いと経営判断すれば、コンサルタントなど外部専門家の力量を活用することも必要です。
外部情報(同業、コンサルタント、厚労省、食品安全委員会、Codex委員会など)や、自社スタッフの経験、法令・規制、顧客要求などから、今現在の食品安全チームが予測し得る全ての食品安全ハザードを挙げましょう。
ここでは、予測し得るもの全てです。
「このあと、○○の管理をしているから大丈夫・・」などの評価はいりません。
評価はこの後の「8.5.2.3 ハザード評価」で実施します。
ここでは、考え得る全ての食品安全ハザードを詳細に抽出してください。
この後の許容水準を決める際に、見落としがちな視点は、「フードチェーンにおける後続する段階」です。
例えば、食品加工を担っている組織は、納品されたあと、小売りや飲食店、または家庭で、どのような陳列、保管、調理がされるかを意図する用途に絡めて、想像し、起こり得るハザードを予想し、抽出、食品安全ハザードの製品中における許容水準を決めなければなりません。
食肉加工を行い、更に焼き肉店を経営しているような組織であれば、店舗での消費時(消費者が肉を焼く時)を想像して、食肉加工時点での食品安全ハザードとその許容水準を決めましょう。
焼く前提だから・・・、公の基準が無いから・・・と言って、菌がいくらいても良いとはなりません。
あとよくあるのが、金属異物を食品安全ハザードとし、許容水準を決める際、これまで、金属異物が検出されたことは一度もないという組織がいます。
それでもその組織の顧客が、そのハザードの管理を要求してくる場合は、自社の経験上は、そもそも食品安全ハザードなのか?という疑問を感じつつも、法令・規制や顧客要求事項にそって、食品安全ハザードとしての抽出、許容水準の決定が必要です。
食品安全マネジメントにおけるHACCP原則1は、大変重要な作業です。
食品安全ハザードに漏れはないか、現場確認しながら、よく見直して下さい。
また、新規の食品安全ハザードにもアンテナを張っておきましょう。
事故が起きた際の風評被害、ブランド力の低下、回収コストと見合う、製品の品質及び安全管理コストを掛けて頂きたいと思います。
次回は、「8.5.2.3 ハザード評価」を解説します。